『さかしき人にみるこころ』 レビュー

相当な良作。低価格だからこその成功作かも。


攻略対象が一人。
カップル成立までとカップル成立後、どちらも順当で普通の恋愛もの。まあ何も驚くところの無いシナリオだが読ませる。特にカップル成立までの見せ方が上手かった印象がある。
というのも、タイトルにあるように主人公が「賢し」く、その賢しさでもってどう恋愛するかというのを書いたのが上手かった。賢しい主人公を書くと、物語りも賢しくなり穏当な恋愛ものじゃなく重い作品になりがち。賢しくない主人公の恋愛ものだと、駄目主人公に偏りがち。そんな中このゲームは設定通り「賢しい主人公が賢しく恋愛する」のを描き、あまりファンタジーに過ぎないで好感の持てる主人公を書きながら、軽い恋愛ものとして必要なドリーム(ツンデレ)もちゃんと備えた話に仕上がっている。


声優は青山ゆかりまきいづみ木村あやかと鉄板。
数年前に比べるとやはり青山ゆかりは喘ぎ声でとうが立って聞こえる、木村あやかは高くて大きい声を出すには鳴りが足りないのにどうも無理して高い声を出している感が否めない、などけちも付けられるが概ね流石の出来。
まきいづみは素晴らしかった。別にまきいづみファンではないのだが、この作品での声は他と比べても抜きん出た完成度だったと感じた。とてもリズミカルで飽きさせない喋りかた。非攻略、天然半分などの属性もよく合ってた。


低価格ソフトなので攻略対象一人というのも物語の良さに貢献している。
特に「どんちゃん」は非攻略キャラとしてではなければ書けない良いキャラだった。真路乃も嫌な面の抜けきらないキャラとして悪くなかった。エピローグあたりでどんちゃんの行方を見たかった気もする。まあスピンオフがあるそうですが。


音楽や背景の過去作からの転用は、気になるかどうかは人によると思うので。
私はDMFをやっていないせいか背景の転用は気づかなかった。音楽は「僕と、僕らの夏」より転用されたもので、シリアスめの曲の一つがどうも合ってないように感じ気になった以外はまあ別に。
音楽は良いにこしたことはなくも、悪くて当たり前のエロゲ音楽に過度な期待はしないものでしょう。最近はそうでもなくなったかね?


本作のキャッチコピーの「衒学的なヒロイン」。
これは「ツン講釈」と捉えれば相違ないでしょう。
また良く考えると知性派ヒロインはそこそこ思い当たれど「知性派眼鏡っ娘」は意外に少なそうなので、そういう需要もありそうです。