円城塔『烏有此譚』 感想

烏有此譚
烏有此譚
posted with amazlet at 09.12.19
円城 塔
講談社
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本編はいつもの円城作品と言って差し支えなさそうだが、注が付いたことで随分良い本になっている。
ぷっちゃけて言えば本編より注がおもしろい。
注の内容は広範な知識を活かした科学エッセイ風与太話といった感じ。注単体でも面白いというのもあるし、本編の解題としてもかなり良い仕事をしている。この注のおかげで他の円城作品に比べても本編読了して「なんとなく分かった気分」になりやすい。まあ逆に言えば、この本編だけではいつもの円城不条理だな〜という程度で特に薦める感じでもなかったかもしれない。「曰」は「日」とはトポロジカルに違うのに気づいてなかったという点なぞ、注がなければ混乱するも必定である。


円城の小説はもうちょっと分かりやすかったら良いのにと思っている人、あるいは小説よりもエッセイなどのより素っぽい文章のほうが好きという人に向いているだろう一冊でした。