『永遠の終わりに』レビュー

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・深読みの出来るシナリオ構成。整った文章。味のあるキャラクター。雰囲気のある絵。
・足りないデバッグ。聞くに堪えないキャスティング。いらない音楽。ぶつ切りのシーン構成。

どの観点から評価するかによるが、私は良作であり奇作であると評する。ワゴンなら万人に薦られる出来。




物語は「後日談もの」。
シナリオの分量は結構あるが、そのうちを「後日談」が占める分量も多い。
内容はオーソドックスなものと見ていい。新聞部を軸に集まるキャラクターたち。語られない人間関係と悩み。年配の友人。病室暮らしの少女。廃校が近い学校ということで『この青空に約束を―』や、また町の変化という点から『CLANNAD』を想起することもあったが、それらよりも人間関係とか内面性がメインかな。
キャラクター性は絵から想像するよりも崩れているだろう。男女ともに砕けた話しっぷり。ジークンドーの使い手。日本刀を持ち歩く少女。なんば歩き。校舎の壁を登ってくる面々。南洋諸島で暴れまわったという老人。漫画時空というと説明が早いかな?絵の雰囲気に反して砕けた設定です。


シナリオ。
なんと言っても本作はシナリオ構成が凄い。主人公の存在を否定している。意欲的な構成と言えるだろう。後で文章を褒めて展開を貶すが、今作のシナリオライターは上手いと思う。調べたラ3人ライターが関わっているようだが、そのうち0-takeという人が帆月ルートのシナリオを手がけているようで、私が特に評価するのもこの帆月ルートなのでこの人が上手いのかもしれない。帆月ルートは設定への理由付けが上手く、くるみルートが物語として上手い。私の評価が高い帆月ルートは一般に否定の意見が多いことも付け加えておこう。推奨攻略順だが、くるみルートは最後にするべき。


で、文章。文章は、正統派。ヒロインが頻繁にひどく乱暴な口調を使ったりもするが、基本的な文章はエロゲーらしからぬ整った文章でした。あと、アピールしているのか何となくなのかは分からないが、はしばしに「サンリオSF文庫」だの「奇想コレクション」だのという文字が出てきたことを思うと、もしかしたら『永遠の終わりに』というタイトルはアシモフの『永遠の終わり』を意識しているかもしれません。ただし内容には関わりなし。
シーン構成は良くない。シナリオ全体を俯瞰すると上手いんだが、細かいシーンの繋げ方が下手。作中で描かれる時間は長いのだが、時系列に沿っているとはいえぽんぽんと場面が飛び、また場面から場面への連関が低いことも珍しくない。
シーン構成の下手さに関わることだが、一枚絵の使い方も上手くない。一枚絵は個別ルートのエロシーンとエンディングに数が偏っていて、共通ルートの一枚絵が少なすぎる。一枚絵も少なさも含めて、流れの感じられない共通ルートであった。


デバッグ。足りない。プログラムが落ちることはないが、もっとこう。


声。全然合ってない。前述のように端整な文章なので、アニメ声的な声優はそもそも合わないと思われる。なので難しいとは思うが、にしても合っていなかった。私はボイス切ってプレイしています。


音楽。合っていない。そう悪いとも思えないが、文章と絵のインパクトが強く、物語の雰囲気も文章と絵がごっそり持っていっている。そこにこの音楽が合っていないのだろう。相性ですね。私は音楽切って(ry



不条理キャラの代表桃。南洋諸島で倒した相手の耳を集めたという祖父について歌っている。



たまに出てくる本ネタ。




・まとめ
何といってもシナリオが良い。随分良い。粗も見えるとはいえ、物語としてもキャラ・シナリオともに良い出来だし構成も面白い。絵も雰囲気が出ていていいが使い方が上手くないのでそこまで期待しないほうがいいかも。
音関係等その他の部分は弱いが、そこは無視してシナリオのみの買いでも足りる可能性は高いと思います。




以下すごくネタばれ:


シナリオあらすじ。あるいはなぜ『永遠の終わりに』が投げっぱなしジャーマンなのかの手がかり











あらすじ:
敬介と仲間たちの交流(仲間はそれぞれ問題を抱えている……?)が描かれる

個別ルート入るとすぐ、ふと夢に落ちるように場面(……?)が切り替わる

圭一と仲間たちの交流が描かれる(敬介の約一年前の出来事)

圭一とヒロインがくっつく。

問題が生じ(ここで?の原因が描かれる)やがて圭一が町を去る(ルートごとに顛末は異なる)

エンディング

エピローグ。長い夢から覚めたように?の場面に戻る

「何かここ数ヶ月は圭一が帰ってきたみたいだったね。みんな問題を抱えていたのに、何で仲良くできたんだろう?」このような発言の際、敬介はどこにも存在しない

なんとなく問題が解決気味になる




で、終わってみると現在の主人公は夢で過去の主人公は去った。って本作には主人公がどこにもいないという。
ルートごとに?の問題発生の顛末が異なるんだが、?の理由付けとしては帆月ルートが非常に上手かったと思う。
ジークンドーで旅立ったのは笑うかどうか迷うレベル。
桃が刀を抜きつける一枚絵も笑うかどうか迷うレベル。