『時間封鎖』 レビュー


良作以上。抜きゲではなく、凌辱シーンの豊富な主人公中心の世界観ゲー。


停滞した主人公の変遷の足跡を辿るゲーム。そして、世界は優しい。
ゼロ年代SF代表作の一つとの呼び声高い方の「時間封鎖」は読んでいないが、こちらもどうして中々の作品。見た目が凌辱抜きゲだが、シナリオで評価できるレベル。ややコンパクトな規模の作品という点以外は、シナリオ良し、声良し、エロシーン豊富、と誉められるべき点ばかり目に留まった。


シナリオ。
特に良いのは世界観が明かされたあとの雰囲気とトゥルーエンド。
この作品では主人公が世界に置き去りにされたような雰囲気が強く、また印象的。トゥルーはじんわりさっぱりと優しい世界が描かれているが、基本的に陰性な主人公の雰囲気が強い世界観。


本作で特徴的なのが文章方式。
・「句点」が存在しない
・改行の多用
この2つの理由で、細かく区切れているのに切れ目の感じられにくい文章に仕上がっている。
改行については、メールの文章(もしくは掲示板への書き込み)を想像してもらいたい。メールや掲示板の文章では、読みやすくするために文章ではなく句で改行することが見られるが、まさにあのような感じの文章。
エロゲで改行が多い文章というと『Forest』や『漆黒のシャルノス』などが思い浮かぶかもしれないが、これらが文章の外観やウィンドウの文章表示量に気を使って改行を用いているのに対し、『時間封鎖』の改行は読みやすくするため何となく用いているというようなものである。
本作における「句点」の不在と改行の多用を好意的に捉えるならば、「理屈で構成されているのに茫漠とした雰囲気」というのを感じさせる助けとなっていたとも思える。


文章方式の特徴についてもう一つ。
非常に目につく表現として、
・「〜からだ」の多用
がある。
時間封鎖 感想 - ここにいないのはより感想を一部引用する。

文章はぶつぎりで巧みではないのですが、一貫した理性と論理があり、淡々と連ねられると妙に印象的でした

これに「〜からだ」が寄与している。
『主人公の一人称で行動や感情の結果を述べる→「(なぜなら)〜からだ」』
という形式が繰り返される。このことで「主人公が内省的である」「論理的思考に依拠する」「淡々としている」ということが強く読者に示唆される。
もちろん文章が一辺倒という側面もあるので良し悪しはあろうことも疑いない。


シナリオについてもう少し。
導入部の展開やキャラ立ちは微妙。起承転結で言うと、前述したように「転→結」(世界観の解明→トゥルーエンド)はかなり良いが「起→承」(日常編→能力獲得)が良くない。「起→承」までで主人公の内面をもっと上手く読者に伝えられていればと思わないでもない。
キャラ立ちもややもったいない。声も立ち絵も良い出来だが、どうしてキャラの個性がいま一歩。性格付けも悪いわけではない。シナリオ的に主人公の比重が大きかったからかもしれない。


・まとめ
淡々、茫漠、停滞したような主人公と世界が印象的な凌辱シーン豊富でちょっと短めのシナリオゲー。期待する点を誤らなければ外れということはないだろう。


http://cellworks.co.jp/all-time/timeblock/main.html(ALL-TiME)