「ゲルション・シロタ(Gershon Sirota) 1874-1943」(Symposium) 追記:タハリール関連

数日前東京を通ったのでdisk union御茶ノ水で色々漁ってきて現在ホクホクなのだが、その中から一つ。


「Gershon Sirota, 1874-1943」(symposium SYM-1147)


そもそもゲルション・シロタ(Gershon Sirota)を知らなくSymposiumのレーベル買いしたのだが買ってよかった、聴いてよかった。
Wikipe見ると「ユダヤ人のカルーソー」とかも言われたらしいが、わからなくもない程上手い。
このCDの曲は全部ユダヤの民謡か何からしくオペラアリアとかではないのだが、ちょっとそこらにはいないテノール
カルーソーと並べたらカルーソーかもしれないが、コレッリと並べたらこちらを取るかな、という程。
声はやや太めで、録音年代が広く年齢を重ねるごとに艶と個性が声に乗ってくる。
その晩年の録音の上手さたるや比類ない水準。
曲は楽器なしで合唱を伴って歌っている曲が多く、曲調は暗めで格好いい。
1800年代的発声の古さは少しは感じられるかも、というくらい。
最近聴いたヴァイナス(Vinas)、ヴェッツァーニ(Vezzani)とかが何かぱっとしないなあと思っていたが、Sirotaは非常に聴いてよかった、ヒストリカル録音を聴き続けていてよかった。
ユダヤ民謡はこの人の録音で向こう200年くらい戦えるだろ、という凄さ。
録音も古くてもよく声を捉えていて、この時代の中ではとてもいい部類。
とてもおすすめ。




追記:


ちゃんと聴いたら、この人はタハリール(とは国が違うので言わないだろうが、胸声と裏声を交互に鳴らす同じ技術)を用いているようだった。
ペルシャ古典音楽、特にその歴史の大きく変化する前の録音を聴くと発声の良さに驚かされるが、しかしシロタがタハリールの技術と西洋的発声をここまで高度に両立させていることは類例がないのではなかろうか。
以前私も憧れて色々試していたが、裏返ってはならない西洋的発声を保ってころころと裏返すタハリールをどう学べばよいのかと悩まされた。
以前タン・ドゥンの「新マタイ受難曲」(SICC-96/7)というのを聴いたら、タハリール的技術を用いるテノールだったかがいて驚いたが、その多様な技術は褒められこそすれ、声の響きはカルーソーと比べようなどというものでは当然無かった。
この録音を聴いて、手に負えないからと久しく放っていたタハリールについてまた触れてみようかと思う次第。
まこと、このシロタの録音は参考になるなどというレベルではない歌である。