『ももえろ濃霧注意報!』レビュー

良作未満ではあるが、個々の地力が感じられる作品。特に文章と音楽。
キャラや舞台設定は面白いが、その面白い設定は最後20分くらいで唐突に明かされ終わるというのがもったいない。




シナリオは、話の筋道がちょっとぼんやりしている。
何故ぼんやりしているのか、それは物語の設定を最後まで隠したためである。


本作はちょっとした謎を提示して興味を惹き、そしてエロ。という王道シナリオなのだが、解決される謎・最後に開示される舞台設定が結構とんでもない。要素要素はそう突飛でもないのだが、ほぼ全ての登場人物に隠された設定があるのだ。
設定は物語の終盤まで少しも明かされず、謎の提示のみで進行する。そしてその解決・説明役はほとんど一人のキャラに任されている。
最後の最後に押し込められた設定解明。そのため「謎とエロが散漫と提示されるぼんやりとした物語」という体裁となってしまったと考えられる。


あらすじを書くと「新しい学校(寮付き)へ転校した主人公と妹、入部した江戸風俗研究会の面々とのわいわいがやがや、だがエロを誘発する霧が発生して……」という話。このエロを誘発する(催淫性の)霧が作品タイトル『ももえろ濃霧注意報!』につながっているのだが、物語のメインはキャラクター同士の相互関係であり、霧はいくつかある舞台装置(ぼんやりとした記憶、既視感、時計塔、飛行機など)の一つに過ぎないため、作品タイトルはあまり成功してはいないだろう。


主人公のキャラクター設定は良く、そして惜しい。
主人公は実はエロ小説家であり、童貞を喪失したことにより作品が書けなくなり悩む。この悩むシーンにおける主人公の独白は中々良い味を出していた。鈴果ルートにおいて悩みの解決が描かれるが、小説が書けなくなるまでの変遷、書けない時の苦悩をもっとしっかり書いてほしかった。主人公が悩みを超えて想いを書き綴るシーンが良かっただけに惜しい。


文章と音楽は地力を感じるものであった。
文章は特筆するような何かがどう、というのではなく安定して読ませてくれるものであった。しかしその安定性こそ楽しいB級作品には不可欠であろう。
音楽は、特にロック調の曲で力を発揮していた。OP曲の出来はエロゲーでは随分良いほうではないだろうか。なお、演奏力ではなく曲の力で勝負してこのレベルというのを見るべき。演奏の精度はそう高いものではない。




・まとめ
個々の設定やシーンは面白いが、全体的に散漫な印象も否めない。
音楽・文章・声などに安定感があるため、趣味に合うなら楽しめるだろう。
タイトルから期待するかもしれないが、エロはそこまで濃くはない。



http://221.245.251.42/soft/bg_602/index2.html(LAPIS BLUe.)


追記:
ネタバレ全開で、最後に明かされる設定などのおもしろポイントをまとめておく。ネタバレでも聞かなきゃ食指が動かないという人はどうぞ。







・主人公を含む3人が未来人(うち1人は猫)。1人は街の意思に身体を乗っ取られたループ体。男の友人と委員長は主人公の両親。
・エロを誘う霧を生み出したのは街の氏神。昔、街が遊郭として栄えたのはエロ霧のせい。遊郭が栄え人が増えることを望んだ街の意思が霧を生み出した
・ご神体の鏡がループを引き起こす(霧とはおそらく別件)。時計塔の奥に隠された鏡を壊すため、洞窟で見つけたゼロ戦に乗って主人公とヒロインが特攻
時空捜査官