ジュリアン・トレジャー『サウンド・ビジネス 「音」から価値を生み出す新手法』(ヤマハミュージックメディア)

サウンド・ビジネス〜「音」から価値を生み出す新手法〜
ジュリアン トレジャー
ヤマハミュージックメディア
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意外となかなか良い本だった。サウンドスケープの現状や課題を網羅的に扱った本で啓発的な部分におもしろさがある。そのかわり専門的な見所は無いかと。
特筆すべきは取り上げられている音環境ネタの広さと取っつきやすさ。コンサル会社の社長が書いただけあって極端に言えば「〜〜の音は手を付けられていない。ビジネス的にチャンスだ」みたいな感じで様々なサウンドスケープ的問題が取り上げられるだけの本ではあるんだが、そこで挙げるネタが多様かつ身近で、啓発書としては良い感じに仕上がっている。ありそうでなかった。「商品デザインとしての音」から「音姫」や「街で流れるクリスマスソング」など分かりやすいネタを題材にしながらも、音はうるさくなければ良いというものでもなくあればいいわけでもなくといった扱い方のデザイン面の複雑さはちゃんと抑えているので啓発性のある本になっている。もっとも啓発する以上の詳しい論はないのでそれ以上の本ではない。
ゲーム音楽や効果音について根本的なところからの問題提起みたいなことを考えるのには、むしろこういう本が役立つんじゃないかしらと思いました。サウンドスケープを知らない人は見てみてもいいかも。