十文字青『ぷりるん。』 感想

ぷりるん。~特殊相対性幸福論序説~ (一迅社文庫)

ぷりるん。~特殊相対性幸福論序説~ (一迅社文庫)

筋はありふれているが文章とキャラクターが好ましい。悪くない作品であった。


まず言及しなければならないのは売り方の下手さ。表紙絵が可愛いのはいいのだが帯の紹介文も裏表紙の紹介文も何の役にも立たず内容が無い。特に帯はもう少し何とかならなかったのか。
『姉・妹・幼馴染・クラスメイト・部活仲間、主人公の周りにいる女性はみんなどこか変わっている。振り回される主人公はやがて少しずつ壊れてきて……』というのが物語のあらずじ。恋愛がテーマの崩壊系ストーリーです。
この作品の魅力は、その壊れてしまう主人公にある。超然としているわけではないが嫌味のないキャラクター。そしてその主人公の影響か、一人称で語られる文章は特筆するほどではないにしろ味のある文章となっていて、ケータイ小説的な展開をくどさを感じさせず読み進ませる雰囲気作りに一役も二役も買っている。


そう、あらすじは平凡かと思われる。桃川関連の展開などは特に典型的であった。妹も然り。それでいてこの水準に仕上がったというのは、技巧的とまでは言えないもののどこか淡々とした良さを感じる文体ありきであろう。